<社説>東京五輪空手追加 沖縄文化を発信する好機


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 2020年東京五輪の大会組織委員会が追加種目として空手など5競技、計18種目の実施を国際オリンピック委員会(IOC)に提案することを決めた。来年8月のIOC総会で正式決定される。

 IOCは昨年12月、追加種目を提案できる権利を開催都市に認めた。東京都は当初から野球・ソフトボールと空手を追加種目の軸に据えていた経緯もある。空手が実施される可能性は極めて高い。
 空手は沖縄発祥の武道で、沖縄の誇るべき文化である。空手が東京五輪で実施されれば、沖縄を世界にアピールする絶好の機会となる。
 空手が五輪競技に入るメリットは計り知れない。県内で空手の稽古に励む青少年に夢と希望を与える。県全体の競技力向上にもつながろう。
 東京五輪参加各国の県内での強化合宿も期待される。本場の沖縄空手の神髄に触れてもらい、県内の各流派や競技者、子どもたちと交流すれば、双方にとっていい刺激になる。
 県民としても礼節、克己など空手の持つ価値を再認識し、世界に広がる沖縄文化の魅力を再確認する機会になろう。
 沖縄伝統空手道振興会長を務める翁長雄志知事は県議会6月定例会で、空手の県内実施を働き掛ける考えを表明している。県議会も昨年の12月定例会で空手の競技会場を県内とするよう求める意見書を全会一致で可決している。
 五輪憲章には「1都市開催」の原則があり、空手は日本武道館(東京)での実施が計画されている。だが、空手の沖縄開催が不可能ということではない。政府は野球・ソフトボールについて東日本大震災からの復興をアピールするため、福島県で1次リーグの一部試合開催を検討している例もある。
 政府や組織委は空手の沖縄開催をぜひ検討してほしい。空手発祥の地で開催することで注目度は格段に高まろう。知事も積極的に働き掛けてもらいたい。
 東京五輪が終了すれば、24年大会に向けて空手も他の競技と正式採用を争うことになる。空手を東京五輪で終わりにしてはならない。東京五輪で空手の魅力を十分にアピールすることで、将来の正式種目化の一歩にしたい。沖縄側も空手の五輪継続実施に協力できることはないか、知恵を絞りたい。