<社説>手話言語条例 制定の動きを歓迎する


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 県議会が手話言語条例の議員提案での制定に向けて取り組んでいる。積極的な動きを歓迎したい。

 条例は手話を言語として認め、使用しやすい環境整備を図ることなどが目的だ。制定に向けて県議会は与野党で構成する検討委員会を発足させた。小中学校での手話学習の導入を盛り込むことなどが検討されている。来年2月の定例会に条例案提出を目指すという。実現に向けた実りある議論を期待したい。
 手話を言語として認め、障がい者や健常者に普及させることなどを盛り込んだ条例制定の動きは全国各地で進んでいる。ことし8月末時点では全国18県市町で施行されている。
 都道府県では2013年10月に全国で初めて制定した鳥取や群馬、神奈川の3県で制定されている。このほかにも北海道や山梨県などが制定について検討している。
 沖縄県議会では1月に文教厚生委員会がイタリアを訪問し、通常学級で手話を使う「インクルーシブ教育」を視察したことなどを契機に条例制定に向けた議論が始まった。
 検討委は障がい者団体と意見交換した上で、パブリックコメント(意見公募)などを実施して条例案を提出する予定だ。条例制定の必要性については各会派ともに一致しているという。ぜひ具体的な議論を加速させてほしい。
 手話について関係団体は「聴覚障がい者は頭に手話が浮かび手話で考えるため筆談での理解が困難」(全国手話通訳問題研究会の伊藤正事務局長)とその必要性を強調し、手話の普及に向けて国による法整備を訴えている。
 世界ではニュージーランドなど、手話を公用語として認めている国もある。手話言語条例の制定を通して手話への理解を深め、不足している手話通訳者の養成に結び付けることなどが求められる。
 全国初となった鳥取県の条例は、手話を「独自の言語体系を有する文化的所産」と明記し、手話の普及や手話が使いやすい環境整備を推進することを県や市町村の責務と定めた。
 鳥取県は条例制定後、県民向け講座や小中学校での指導手引書作りに取り組み、県内での手話検定の受検者が倍増した。手話教育の充実にもつながり、鳥取での「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」も始まった。沖縄でも同様の成果を期待したい。