<社説>防衛装備庁 戦争の「輸出」は許されない


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 日本政府は軍に関する用語を言い換えることが多い。戦争を連想させない言葉にすり替え、その本質を隠すのが常なのだ。その列にまた新たな例が加わった。

 防衛装備庁が発足した。本来なら「武器開発・調達庁」とすべきだ。「武器」を「装備品」と呼び替えることで人身殺傷の生々しさを打ち消す結果をもたらしている。
 しかもこの役所は、武器禁輸三原則を撤廃して作った「防衛装備移転三原則」に基づく組織である。解禁された武器輸出を、今後は大々的に推進していくのが目的なのだ。
 解禁の背景には経済界からの強い要請もあった。武器を製造する企業は、概して原発やインフラの海外輸出も進めている企業でもある。武器の他国との共同開発を増やすことで開発コストを削減し、自社の体力を高め、その結果として原発などの輸出競争に勝ち抜こうとする狙いもうかがえる。
 安倍政権は武器輸出拡大も成長戦略の一部と位置付けている。しかし、自らの利益のために他国の人身殺傷能力を引き上げ、緊張を高め、軍拡競争をあおることが人道にかなうのか。
 戦争の「輸出」は許されない。軍拡を助長して戦争を広めることがないよう、安倍政権が取り払った「たが」を作り直す必要がある。再び平和国家として歩むため、新たな武器禁輸原則を作るべきだ。
 当面は、装備庁が行おうとする武器輸出に最低限の歯止めをかけなくてはならない。新たな三原則は「紛争当事国への輸出を認めない」と定めるが、相手国が日本の同意無しに再輸出するのも、目的外使用するのも自由である。まずはそれを再輸出禁止制に改め、万が一にも紛争国に渡らないよう厳格に運用すべきだ。
 装備庁は、武器の調達や開発、廃棄を一元的に管理することで調達コストを抑制するとうたう。
 確かに「まとめ買い」や長期契約でいくらかの経費節減は可能だろう。だが日本の武器調達はそもそもが米軍より著しく割高な購入が多い。調達に介在するロビイストの存在も一因とされる。2007年の防衛事務次官汚職でも、調達に関わる日米のロビイストが絡んでいた。
 こうした不透明な調達の仕組みがある限り、不祥事は続く。装備庁は年間2兆円も扱う巨大な調達機関だ。新たな不正の温床にならぬよう監視しなければならない。