<社説>景況感悪化 現実見据えた経済政策を


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 景況感の悪化が鮮明になっている。日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)で大企業と中小企業の景況感がそろって悪化した。

 安倍政権は先月、子育て支援などの新たな「三本の矢」を打ち出したが、従来の施策を列挙した内容にすぎず、アベノミクスは手詰まり状態になっている。これまでの政策を検証し、地に足の着いた経済政策に転換すべきである。
 9月の短観は、代表的な指標である大企業製造業の業況判断指数(DI)が前回の6月調査から3ポイント下落のプラス12となり3四半期ぶりに悪化した。世界経済をけん引する中国など新興国の景気減速や株安が響いた。3カ月後を示す先行きのDIは、2ポイント悪化の大企業製造業を含め、企業の規模や業種を問わず悪化した。
 内閣府による8月の景気ウオッチャー調査も同様の傾向となっている。街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比2・3ポイント下落の49・3となり、2カ月ぶりに悪化した。指数の水準は、好不況の判断の分かれ目となる50を7カ月ぶりに下回っている。
 アベノミクスによる円安は原材料費の高騰となって中小企業を直撃している。消費税増税の影響もあり消費は伸びず、景気回復の波は地方に及んでいない。2015年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除く実質で前期比0・3%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算で1・2%減となる。
 安倍首相は「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を新たにアベノミクスの三本の矢とし、GDPを600兆円に引き上げることを目標に掲げたが、実際の景況からあまりにも懸け離れている。
 一方、国内の景況悪化に対して県内の景況は観光分野を中心とした県経済の好調さを反映し、調査を始めた1974年以降最高となった。蒲原為善日銀那覇支店長は先行きについて「県経済が腰折れする材料はなく、仮に中国経済が下振れしても県経済の好調さは当分の間は続く」と分析した。
 沖縄は今、人口増を伴うアジアの成長を、沖縄の経済発展に結び付ける見取り図としてアジア経済戦略構想を描き、実現に向け歩みだしている。沖縄の経済発展が日本の景気を刺激する役割を果たすことに期待したい。