<社説>報道圧力処分軽減 国民、県民を愚弄している


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 自民党は、党所属若手議員らの勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番」などと、報道機関に圧力をかける発言が相次いだ問題をめぐり、1年の役職停止としていた木原稔前青年局長の処分期間を3カ月に軽減した。

 憲法で保障された言論の自由を軽視した一連の行為への処分がそもそも軽過ぎた。それなのに、処分を軽減するとは開いた口がふさがらない。
 谷垣禎一幹事長は「本人も反省し、その気持ちが明確だったので、3カ月で終わらせたい」と話し、勉強会代表だった木原氏は「悔恨と反省の日々を過ごしてきた。処分が解除となったが、これからも大局を見極める政治家となるよう努力する」とのコメントを出した。
 処分を軽減した理由は不明瞭で、木原氏のコメントからでは、何について反省しているのか、さっぱり分からない。国民、県民を愚弄(ぐろう)しているとしか言いようがない。言論の自由を脅かす行為の深刻さにあまりにも無自覚過ぎる。問題認識が甘い。
 勉強会の出席メンバーは安倍晋三首相に近い自民党若手議員らだ。首相は当初「党の私的な勉強会だ。発言をもって処罰することがいいのか」と関係者の処分にも否定的だった。ようやく自らの非を認めたのは勉強会から8日後のことだ。「国民に対し大変申し訳ない。沖縄県民の気持ちも傷つけたとすれば申し訳ない」「最終的には私に責任がある」と述べたが、あくまで「傷つけたとすれば」という仮定付きだった。
 安保関連法成立を受け木原氏の処分を軽減したことを見れば、やはり法案審議への影響を抑えるための「党利党略第一」の即決処分であったのは明らかだ。首相の言葉は、心から沖縄に向けた謝罪の言葉ではなかったのだろうと言わざるを得ない。
 この報道圧力問題に限らず、安保関連法などに関しても「法案は違憲」と指摘する多くの憲法学者を攻撃したことも含め、安倍政権、自民党には「他の意見を軽んじる」「耳を傾けない」という体質、傲慢(ごうまん)さが常に見え隠れする。「新基地建設ノー」という沖縄の民意を無視し続ける態度からも明らかだ。
 異論排除の体質、謙虚さを欠いた政権姿勢を改めない限り「自民、感じ悪いよね」の評価は広がり続けるだろう。