<社説>米のアフガン誤爆 空爆の非人道性を証明した


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 何の罪も無い人々、それどころか崇高な使命感で人命を救おうとした人々が無残に殺傷されてしまった。罪深い行為と言うほかない。

 アフガニスタン北部クンドゥズにある国境なき医師団(MSF)の病院が3日、米軍による誤爆とみられる攻撃を受けた。病院職員や子どもを含む患者ら少なくとも19人が死亡、負傷者は30人以上で、行方不明者も多数に上る。

 アフガン駐留米軍は声明を出し、ほぼ同じ時間帯に空爆を実施したと認め、「現場近くの医療施設に副次的な被害が出たかもしれない」と述べた。

 しかし、MSF関係者が述べた通り、今回の惨事を「『付帯的損害』と片付けるのは許されない」。オバマ米大統領は「国防総省が徹底調査を始めた。結果を受けてこの悲劇に対する最終判断を下す」と述べたが、それでいいのか。MSFの主張するように、独立した第三者による徹底調査を求めたい。

 医療施設や医療従事者に対する攻撃は国際人道法で禁じられている。従って今回の空爆は、戦争犯罪にも等しい。責任者と実行行為者に対し厳しい処罰を下さなければ、国際社会が許さないだろう。

 アフガン北東部にあるこの病院は、戦闘に巻き込まれて負傷した人を治療する、この地域でほぼ唯一の施設だった。だが空爆でMSFは職員を撤収させざるを得なくなった。病院はもはや機能していない。空爆は現地市民の生活も根こそぎ破壊したと言える。

 MSFは病院が爆撃を受けていると首都カブールや米ワシントンの米軍に繰り返し通報したが、空爆は30分以上も続いたという。

 もともとMSFは医療施設の正確な位置情報を全ての紛争当事者に通知している。今回の病院も既に先月末には駐アフガン国際部隊に知らせていた。

 アフガン政府は、タリバン兵が病院内に入り込み、病院内の人々を盾に治安部隊と交戦したと説明する。それが事実だとしても、米軍がタリバン掃討を優先し、医療施設の位置情報を軽んじた事実は揺るがない。

 米国はロシアのシリア空爆が民間人を巻き込んでいると非難していたが、面目を失った。同時に今回の悲劇は、空爆という行為そのものの非人道性も浮き彫りにした。民間人を必然的に巻き添えにすることを証明したのだ。地雷や化学兵器などと同様、空爆という攻撃方法自体の禁止を論議すべきだ。