<社説>協議打ち切り示唆 社会常識逸脱した行為だ


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 社会常識を逸脱するような行為を省庁や出先機関が堂々と行う。公務員が本来守るべき職務遂行上の誠実さをかなぐり捨てる暴挙だと言わざるを得ない。

 名護市辺野古への新基地建設の本体工事に向けた事前協議で、沖縄防衛局は6日付の文書で、協議に関する全ての質問を8日までに出すよう県に求めた。防衛局が事実上、協議の打ち切りを示唆した形だ。
 民間企業なら直ちに信頼関係が崩れてしまう、このような強引で一方的な取引などあり得ない。社会通念上、通用しない態度だ。7日の文書到着を受け、県は同日付で応じられないとする文書を防衛局に送った。当然である。
 県の文書は「文書到達から1日で全ての質問等を求めることは、協議を受ける側の事業者として不誠実であると考えます」と記した。行政間の文書で「不誠実」という言葉を用いるのは異例である。県の激しい憤りの表れであり、防衛局は厳粛に受け止めるべきだ。
 沖縄防衛局と県の事前協議は、仲井真弘多前知事が2013年12月に辺野古埋め立てを承認した際に付した留意事項で求めている。「実施設計に基づき環境保全対策、環境監視調査、事後調査などについて詳細を検討し、県と協議すること」という項目がそれだ。
 新基地建設に反対する沖縄の民意に反した埋め立て承認は許されるものではないが、埋め立て工事に際し、前県政は環境問題での事前協議を防衛局に求めていたのである。いわば承認に当たっての条件とも呼べるものだ。
 今回の防衛局の行為は、県が付したその条件を無視するものである。協議を求められた側である防衛局が期限付きで全質問の提出を迫り、協議打ち切りをちらつかせるとは、主客転倒も甚だしい。
 防衛局はこれまでも県に対し、理解し難い対応を繰り返してきた。埋め立て承認の取り消し手続きで県が求めた意見聴取を拒み、聴聞の実施を要求した。県が聴聞を設定した途端、防衛局は陳述書を県に送り、7日の聴聞を欠席した。そして今回の協議打ち切り示唆である。
 防衛局の姿勢は、国策の名の下に国への屈服を地方に強いる露骨な強権性を示すものだ。このような時代錯誤的対応は地方自治の観点からも通用しない。県は厳然たる態度で埋め立て承認を取り消してほしい。