<社説>日歯連事件 迂回献金防ぐ仕組み必要だ


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 「政治とカネ」をめぐる事件が後を絶たない。多くの国民がうんざりしているのではないか。

 政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)の前会長高木幹正容疑者らが政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。
 組織内から擁立した自民党の石井みどり参院議員と民主党の西村正美参院議員の各後援団体に迂回(うかい)献金をしたとされる。特捜部は徹底的に捜査し、全容を解明してもらいたい。
 日歯連は全国の歯科医師約6万5千人が加入する公益社団法人の日本歯科医師会を母体とする政治団体だ。歯科医の収入に直結する診療報酬の引き上げを目的に、これまでも国政選挙で組織の代表を擁立し、その資金力と集票力で政界と太いパイプを築いてきた。
 2004年には日歯連から1億円の小切手を受け取った自民党旧橋本派の献金隠し事件が発覚し、診療報酬改定をめぐる厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」側への贈賄などで摘発された経緯がある。
 指摘しなければならないのは、この04年の日歯連献金隠し事件がきっかけとなって、政治資金規正法が改正され、無制限だった政治団体間の寄付に年間5千万円の上限額が設定されたことだ。
 それにもかかわらず日歯連が再び規制の網をかいくぐるようなことをしていたとなれば、何をか言わんやだ。自浄作用が働かないのであれば、組織や活動の在り方を根本から見直さなければならない。
 今回の事件では、日歯連が13年の参院選で約4億円を支出するなど、3年ごとの参院選のたびに億単位の資金をつぎ込んでいた。
 「政治とカネ」をめぐっては、特定の組織と政治家の癒着をなくすために公金による政党交付金制度が生まれたはずだ。だがその後も企業・団体献金は続き、不正はなくらない。
 今回の事件で自民、民主両党の関係者は捜査の行方を見守るとの姿勢を示したが、むしろ捜査に積極的に協力し、説明責任を果たすべきだ。このままでは政治不信を増幅しかねない。
 日歯連は法定上限額を超えていないように見せ掛けるため迂回献金した疑いが持たれているが、そもそも迂回献金は立証が難しいと指摘される。各党は手付かずとなっている企業・団体献金の見直しを含め、迂回献金を防ぐための抜本策を早急に話し合うべきだ。