<社説>ハワイとの絆 新時代へ漕ぎだそう


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 県と米ハワイ州の姉妹都市締結から30年を迎えた。

 沖縄とハワイは、留学などの人材交流だけでなく、行政間の取り組みも進み、学術交流や再生可能エネルギー分野などで実践的、戦略的な動きが始まっている。県系人として初のデービッド・イゲ州知事の誕生や姉妹提携30年の節目を機に、双方が交流の新時代へ向けて力強く漕(こ)ぎだすことに期待する。
 沖縄からの最初の海外移民先はハワイだった。ハワイの県系人は、地上戦で壊滅的な被害を受けた沖縄の救済に立ち上がった。豚やヤギなどの家畜類、衣類、食糧、粉ミルクなどを送り沖縄の戦後復興を支えた。
 1940年代後半、沖縄に史上初の大学を創立しようと運動を始めたのもハワイの県系人だった。ハワイを中心として、南北アメリカ大陸に点在する県系人を巻き込んで寄付を募り、琉球大学設立に結び付いた。
 その後、医師研修や農業実習生の派遣などの分野で行われていた交流は、1985年の姉妹提携を機に多様な学術交流に発展している。さらに両者は再生可能エネルギーの研究や開発について連携を強化している。ハワイは2045年までに発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を100%にすると宣言した。沖縄とハワイは島しょ地域であり、輸入した化石燃料に依存せざるを得ない。地産地消の再生エネルギーへの転換は、弱みを克服するだけでなく、環境や経済にとってもプラスになるはずだ。
 イゲ知事は9日のイノベーションフォーラムで「再生可能エネルギーを活用すれば多様な経済基盤が構築される。ハワイと沖縄は素晴らしいパートナーシップの代表者となり世界の先頭に立った」とあいさつした。再生可能エネルギーを中心にした学術交流を深め、新たな技術革新やエネルギーモデルを構築して、県経済をけん引する基幹産業に育てたい。
 国際観光都市を目指す沖縄にとって、世界的なリゾート地のハワイに学ぶ点は多い。
 ハワイはハワイ語を州の公用語の一つとして指定して、ハワイ語の再活性化に成功している。沖縄人としてのアイデンティティーを継承していくために、しまくとぅばの再活性化は不可欠だ。この分野でもハワイの実践は示唆に富んでいる。