<社説>野球賭博 球界全体で再発防止図れ


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 プロ野球巨人の福田聡志投手が野球賭博に参加していたことが分かった。現役投手の野球賭博関与という衝撃的な事実はプロ野球界にとって痛恨の不祥事だ。暴力団排除の対策を強化するなど「社会の公共財」としての地位確立に取り組んできた球界のイメージ低下、社会的信用の失墜は避けられない。

 過去にも起きている。1969年に野球賭博に絡む八百長行為に西鉄の選手が関与した「黒い霧事件」が発覚した。池永正明投手が永久追放になっている。
 野球協約では「所属球団が直接関与する試合について賭けをすること」を不正行為として禁じ、違反した場合は永久失格処分が下される。また「所属球団が直接関与しない試合、または出場しない試合について賭けをすること」については1年間または無期の失格処分が科される。
 今回、福田投手は全国高校野球選手権大会の複数の試合で賭けを行って大損し、「取り返せばいい」と持ち掛けられてプロ野球と大リーグそれぞれ約10試合で賭けをした。巨人戦も3、4試合含まれており、最終的に百数十万円の損となっている。
 該当の期間に福田投手は2軍にいた。試合に関与できる立場ではなかったため、八百長行為はなかったとされる。もし1軍に昇格していれば百数十万円の負けを抱えたまま登板する可能性もあった。八百長の危険性は払拭(ふっしょく)できない。
 現在のところ暴力団との関係や他の選手への広がりは指摘されていない。しかし世間の目は厳しく注がれている。日本野球機構(NPB)の調査委員会による徹底調査が求められる。
 2020年東京五輪の大会組織委員会は国際オリンピック委員会(IOC)に野球を追加種目として提案している。IOCは近年、国際刑事警察機構(ICPO)との連携や八百長排除の監視会社を設立するなど、違法な賭博行為の対策を強化している。来夏の総会で委員の投票による追加種目の正式承認に影響が出ることが懸念される。
 野球選手が野球で賭博をするとは職業倫理のかけらもない。そもそも賭博は刑法に抵触する法律違反行為だ。選手だけでなく、監督、コーチも含めた球界全体がモラルの徹底を図り、再発防止に全力を挙げてほしい。