<南風>スポーツ選手と専門家


社会
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 皆さんは「パブリシティ権」という言葉をご存知だろうか? パブリシティ権は「人の氏名、肖像等の有する顧客吸引力を排他的に利用する権利」として最高裁判例でも認められている。SNSやYouTubeの普及により、パブリシティ権が近年ますます商業的価値を持つようになっている。

 分かりやすい例としては、芸能人やプロスポーツ選手が写真やグッズを販売したり、商品を着用してCMや競技に出演する際に企業からスポンサー料が支払われたりする場合がある。

 スポーツ選手に関しては、パブリシティ権を含めた法律・権利関係全体のマネジメントが重要である。現役中は競技に集中するため、契約や金銭管理に本人が時間を割くことは難しい。10代後半から20代の選手は経験が浅く対応の仕方が分からない。他方、活躍して著名となった選手と契約して広告に活用したい企業は多数ある。こういった場合に交通整理をするのがスポーツ・マネジメントの役割だが、日本ではこの分野はまだ発展途上である。

 行きがかり上、選手の家族や学生時代の恩師がマネジメントを担当することが多い。しかし、多額の金銭や複雑な契約が絡む場合、専門的知識がないとトラブルに巻き込まれかねない。選手が現役を退いた後も一個人としての人生は続く。企業の広告塔として使い捨てるような不利な契約はしっかり予防する必要がある。

 選手の知名度をうさんくさい投資勧誘に利用したり資産を取り込もうとしたりする詐欺的なやからもいる。こうした法律関係の交通整理やトラブル回避に弁護士・税理士など専門家のノウハウが有用だと考える。

 近年沖縄出身選手がプロスポーツでどんどん活躍するようになっている。選手をプロ入り前、現役中、引退後を通じてトータルサポートするため専門家をうまく活用することが重要だ。
(絹川恭久、弁護士・香港ソリシター)