<南風>家庭もキャリアも


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先日、20代前半女性が「家庭か仕事か」を二者択一していることに危惧する内容の新聞記者の記事を見て、現代の女性の働き方について先輩の女性経営者と意見交換する機会があった。

 私は、息子が生まれてすぐの検診時に「仕事か療育か」の二者択一を迫られた。主治医に「保育園に入園後、いつから働けるか」と聞くと「障がい児の親御さんはフルタイムでは働かない」と言われ「これまでのキャリアを諦めるのか」と驚きと悲しみを感じた。第一子出産後、壮絶な産褥期不調を乗り越え社会復帰し、やっと心身ともに落ち着いてきた矢先のことだった。

 その後、「子どもの療育も自分のキャリアも諦めない生き方」を選ぶことを決め、この先をどう生きるかを考え悩んだ結果、起業に踏み切った。その選択は、経営者として、親として、子どもの成長を通して、大きな学びを得ると同時に、社会的な役割を担い寄与する機会へとつながった。あの時どちらかでななく、どちらも選んだことが、今の充実につながっている。

 多くの障がいを持つ子どもの家庭は、子どもの療育に時間を割かないといけないという理由で、父親は仕事、母親は子どもの療育というような分業制が暗黙の了解になっているようだ。

 女性が家庭と仕事のどちらを選ぶか、どう比重をかけるかは、それぞれの家族で異なると思うが、どちらかしか選べないわけではない。これからを担う若い女性が二者択一しかできないため何かを諦めてしまわないよう企業はさまざまな働き方のロールモデルを確立する必要があると感じる。

 多くの女性が仕事と家庭を両立し、自分自身が前向きな気持ちでいられるよう環境を整え、行き詰まった時こそ前向きな気持ちで進み、笑顔で感謝を忘れず、後悔のないキャリアを突き進める社会となることを心から願う。

(比嘉佳代、おきなわedu代表取締役)