<南風>外国人の日本生活


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 本州を旅行中、バス待ち行列に外国人らしい一家がいたので話し掛けてみた。一家の出身はインドネシアだという。筆者は沖縄から来たことを伝えたところ、インドネシアには沖縄と似た言葉があると教えてくれた。よくご存知の「ちゃんぷるー」はインドネシアでも「混ぜる」とか「炒め物」を意味する言葉らしい。

 他愛のない会話から、国境のない遠い昔に漁場を求めてインドネシアから沖縄・九州の島々を行き来した漁労民がいたのかもしれない、と思いにふけった。

 ところで筆者は2008年から2年ほど留学で米国に住んだ。当時海外生活は初めてで、購入した自動車の名義変更手続に苦労した思い出がある。郵便で届くはずの名義変更通知が来ないので、州の役所に電話するものの英語で自動音声メッセージが流れるばかりで原因が一向に分からない。このままでは自動車が使えなくなるのではないかと不安と焦りが募った。

 何カ月待っても解決しないので、結局遠距離を移動して役所の窓口まで行き、拙い英語で半ば泣きつくように窮状を訴えた。ヒスパニック系の担当者は筆者の窮状を察して親身に対応してくれ、問題を解決することができた。外国で人の温かさを感じた瞬間だ。

 この時の経験から、外国人が生活する時、地元民以上に面倒や苦労があるのだ、ということを実感した。

 漁労採集時代の遠い昔と異なり、近年は沖縄にもアメリカ、中華圏、東南アジアはじめ、さまざまな国出身の外国人が生活している。日本語は漢字かな交じりであり、初めて暮らす外国人にとって日本での生活は想像以上に大変なものだ。

 外国人の「日本生活の大変さ」を少しでも和らげるためには地元民の「人としての温かさ」が必要だ。沖縄の人々の外国人への理解と温かさが「開かれた社会」への鍵ではないかと思う。
(絹川恭久、弁護士・香港ソリシター)