<南風>生まれ出た謎の鉱物


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 伊江島のお年寄りから、子供の頃雪合戦ならぬ黒い小さなマンガン塊を投げ合って遊んだという話を聞いた。島の地表面の赤土には、それほど存在する。残波岬では、ローラースケートのように滑り回ったことがある。

赤土の中やその表面にゴロゴロと転がっている小粒の黒い塊を見たことがあるはず。方言でヒージャークス、あるいはヒージャークスグヮー(ヒージャーはヤギのこと)と言えば想像がつくはず。所によっては、ティダブーフ、イシダネ、ルーヌクス(ルーは龍(りゅう)のこと)とも。いずれにしても太陽だの龍だのと、何だか不思議なものとは思っていたようである。確かこれは沖縄にしかない。
 太平洋の深海底には、直径10センチ以上の球や、フットボール型のマンガン塊が一面に広がっていることを知った。何個かの標本が県立博物館に保管されているはずだ。海水中から沈殿したマンガンと鉄の酸化物を主とする塊状の沈殿物で、時に銅、ニッケル、コバルトなど有用な金属を含み将来の有望な資源と見なされている。これは海成マンガン塊と言い、赤土中のものは陸成マンガン塊と呼ぶ。焼き物の釉薬(ゆうやく)の材料として利用されている。
 沖縄では、40カ所で存在が確認されている。琉球石灰岩の地層が分布する場所でよく見つかる。そのため石灰岩の風化(岩石が腐れて土壌に変化すること)が起源であると考えられていた。しかし最近幾つかのヒントが得られた。つまり、赤土は基盤岩の風化ではなく、大陸から飛来した黄砂などの変質したもので、風成塵(ふうせいじん)起源であること。また、ある島での赤土層の形成を考えることで、サンゴ礁が隆起して陸になりつつある時、その潮だまりにできた海退浸食堆積物からの沈殿物であるらしいことなどである。この鉱物を沖縄の産業に有効利用することを考えたらどうだろうか。
(大城逸朗、おきなわ石の会会長)