<南風>沖縄VMATの現状


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 災害時にヒトと動物の共生を目指すことを目的としているVMATだが、沖縄県での設立は2018年。現在VMAT隊員は40名(獣医師22名、動物看護師18名)で、原則ボランティアであるため普段は自身の所属する動物病院や公的機関で働いている。規定の講座(座学と実技)を受講し試験に合格した人を獣医師会が隊員として任命する。

 現状の主な活動は「訓練」と「広報」である。幸いなことにVMAT設立後、大規模災害は県内で発生していないため実働の活動経験はない。そのために訓練を行うのだが、対面での机上訓練や屋外での共同訓練などがコロナ禍で大きく足止めされた。隊員同士の直接の交流も実質この2年は行えていない。とはいえオンラインツールの発達により、画面越しでの顔合わせは続けることができたのは、結果的に有事の備えにもつながったと感じる。

 ただ問題点も多い。有事の際に我々の業務の多くを占めるのが、避難所でのペットと飼い主さんの対応。ペット同伴での避難所生活を想像してほしい。犬猫も含めた何らかのペットを飼育している人は全人口の30%弱いるとされる。人々でごった返す避難所にペット連れで訪れる人は3人に1人程度はいる計算になる。

 県内人口は146万人なので、単純計算ではあるが43万人のペット飼育者がいることになる。そのうち犬猫が70%近くを占めるが、残りの30%にはウサギ、ハムスター、インコ、熱帯魚、トカゲなど多種多様な動物が含まれる。当然動物が苦手な方もいるわけで、狭く設備も限られる避難所でどのように共生していくことがベストなのか。そのような想像をすることも私たちの訓練の一つである。

 読者の皆さまもまずは現状を理解し、想像していただくことが有事の備えの第一歩となる。ぜひ友人や家族と話してみてほしい。
(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)