<南風>支えられ成長する僕ら


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 作品はどうにか完成したが、劇場で公開するには何を行えば良いのだろうか。「人魚に会える日。」興行チームは頭を悩ませた。

 基本的な映画の興行活動の形だと、まず製作会社が作品を完成させる。次に配給会社が作品を各劇場に売り込み、宣伝会社が多くの人に宣伝するプランを配給会社と共に構築する。つまり少なくとも三つの業種が一つになって作品を完成から公開まで導くわけだ。
 今回はその活動をすべて大学生の手で担う。映画興行の経験のある大学生なんて見たことがない。そして僕自身、初めての経験だ。スタッフ全員が無知からのスタートとなる今回の活動を行うには、まず映画興行に関する基礎知識が必要だ。そこで先月、沖縄で県内在住のスタッフと関東在住のスタッフが集まって「宣伝合宿」が行われた。この合宿には、東京から配給会社と宣伝会社の方をお呼びした。通常は商業映画を手掛けているプロの方々から、大学生へ映画の興行知識を直接教えてもらうという試みだ。
 「配給とは」「宣伝とは」という基礎知識から、多くの人に見てもらうにはどうしたら良いかといった本格的な宣伝プランの構築までを、スタッフ各自の意見を出し合いながら決めていった。合宿中は打ち合わせの他に、マスコミ各社を訪問するなど、朝から夜中まで可能な限り動いた。非常に過酷な5日間だったが、確実に一人一人が成長しているのを肌で感じた。
 「何もわからない」から始まった興行チーム。そんな僕らを、合宿に参加してくれたプロの宣伝マンや配給マンをはじめ、たくさんの人が側で支えてくれている。
 僕だけでは無力だった。興行チーム全員いても、小さな力にしかならないかも知れない。でも、その力は多くの人の力を借りて、明らかに大きくなっている。
(仲村颯悟、映画監督)