<南風>「語り」から生まれる力


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 グリーフ(死別悲嘆)にある方々からよく連絡をいただく。親を亡くした、伴侶を亡くした、子どもを亡くした。できれば自分と同じ体験をした人と会いたい、そのような人を紹介してくれないか、話せる機会を設けてもらえれば…。予期せぬグリーフに戸惑いながら、周りには理解できないだろう気持ちも、同じ経験をした人になら受けとめてもらえる気がするのだろう。

 家族や友人など親しい人には心配をかけるので、胸中をさらけ出せないという方も多い。しかし本音の吐露なければ、心は塞(ふさ)いだままで前に進めない。グリーフの渦中にあるその時期、安心して語れる場で、グリーフだけをテーマにした分かち合いの場に身を寄せてみてはどうだろう。
 同じ傷を持っているからこそ理解し合え、客観的に自分を見ることができ、先行く者に希望を見いだすこともできる。また必要とする情報も共有しやすい。そしていつしか傷痕は、同じ傷を持つ誰かのための癒やしにさえなり得るのだ。
 自助グループの先進国である欧米で、よく用いられる祈りを紹介しよう。「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ/変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ/そして変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ」
 分かち合いの中から、あるがままの事象を見つめる冷静さと、心の奥の悲しみに向きあう勇気が生まれ、自分らしいグリーフワークになればと願う。
 グリーフワークおきなわは、毎月第3日曜の午後1時半から、アドベンチストメディカルセンター(西原町)で、死別悲嘆にある方々の語る会「うりずん」を開催している。連絡先は(電話)080(4316)0847。
(関谷綾子、グリーフワークおきなわ)