<南風>リズム


社会
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 就職活動中、白髪でスーツが似合うダンディーな専務という肩書の方に面接をしてもらったが、キラキラしていて麗しさを感じるほどの人だった。箸が転がっても笑う幼さを持った私に質問も合わせてくれたのだろう。質問には答えられたがクスクス笑いすぎて反省すべき面接の記憶だ。頻繁に会うことはないが機会があれば夢を語り、向上心をかきたてる話をしてくれるので専務の話を聞くことがとても楽しみだった。

 情報処理会社に就いた私の仕事はプログラミングだと思っていたが、最初はコピーや資料作成、先輩たちがプログラミングした連続用紙の切り離し、電話対応など事務作業が多かった。

 朝起きて会社に行き家に帰る。毎日同じことの繰り返しのような気がして何だか物足りない。当たり前だ、まだ学生気分で当事者意識を持てず、仕事に必要な勉強もしていないのだから。そんな悩みを持ち始めた頃、専務と話せる機会があり「今の私は毎日同じことの繰り返し…」と愚痴をこぼした。すると「生活のリズムができたということだよ。僕だってね、朝起きて剣道の素振りをして会社に来て…」と話された。

 学生の頃は行き当たりばったりの生活だったので「リズム」という言葉が魔法の言葉に聞こえ、自分のリズムの中に仕事で生かせる勉強をしようと決め実行した。そうするとプロジェクトの一員としての仕事も増え、やりたいことができるようになった。

 あれから何十年もたつが子育て期など、その都度のリズムがあったものの、専務の魔法の言葉を思い出し、自分にできることを精いっぱいやることで充実した日々を送ることができた。そんな私も専務という立場になったが、これからも向上心を忘れず、会社の目的に向かって夢を語り、夢に向かって有言実行していこうと思う。
(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)