<南風>千秋


社会
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 長い夏の暑い沖縄にもやっと秋風が吹き、空気が澄んで心地よい時期を迎えた。私の中で秋はオシャレを楽しみたくなるなど、テレビから流れるCMなど温かさが伝わってくることの多いこの季節が大好きだ。

 暑い沖縄だが暦の上では秋といわれる季節に生まれた私の名前は「千秋」だ。小学生の頃、名前の由来を調べる機会があり、父親に聞いた。なんだか意味ありげに笑いながら「千秋(せんしゅう)の思いでつけたんだよ」と言われ、響きがカッコいいなと思い、ドキドキしながら国語辞典で「千秋(せんしゅう)」を調べてみたら、千年とか千歳とか長い年月とあったので、長生きするように名付けられたと解釈しカッコいいと思った響きが一気に崩れさり、落胆した記憶がある。

 大人になり「一日千秋」という言葉を知り、人や物事の到来を待ち望む気持ちの風情を想像することができるようになると自分の名前もいいように捉えることができるようになった。

 何十回と秋を迎えた私も子に名前を付ける親になった。おなかの中で育つまだ見ぬ子のことを思うだけで幸せな気分にさせてくれるその子にすてきな名前を付けてあげたいと思った。

 ネット世代ではない私は画数の本などを買い、思いのある漢字を並べ、考えに考え抜いて子どもたちにこれだと思う名前をつけた。その名を呼び続けた子どもたちも成人を超え、私と同様に年を重ねていくのだろうが私にとってはいつまでたっても子どもであり、いてくれるだけで幸せをもたらしてくれる存在だ。

 子を思う気持ちは私の両親も同じだろう。私と同じように一生懸命考えて名付けてくれたのだと思うと落胆したことを申し訳なく思う。両親がつけてくれた名前をあと半世紀使うことになるが両親からの贈り物の名前「千秋」を胸を張って名乗っていこうと思う。
(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)