<南風>働き方改革の功罪


社会
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 働き方改革について深掘りしたい。物事には二面性があり、良いことばかりではない。まず、生産性を求められるということは働いている時間当たりの多忙感は当然高まる。労働時間が短くなる=ラクになることと勘違いしてしまう人は多いのではないだろうか。少なくとも始める前の私はこれを懸念していた。

 ただ、そのような選択をしようと思えば、できてしまうのも事実。なのでそうならない仕組み作りと会社の風土は必要不可欠だ。ただやみくもに残業時間を削ったところで生産性が落ちる。つまり売上低下につながるわけだから会社としては自らの改革によって自分の首を絞めることになる。

 もう一つは成長や学びの機会は減る事実。これまでは会社が残業という名の学ぶ機会と時間を半ば強制していたわけだが、それがなくなると、その時間を使って自ら自主的に学ぶ姿勢が必要になる。もちろん会社としてもそのためのツールや環境を提供することに協力的な姿勢を見せることも重要。そのためにはデジタル化は必要不可欠な要素の一つ。労働者側は会社に依存しすぎず自立した姿勢がますます求められる。

 そのためには本当に今の仕事が好きかどうか、やりたいことなのかどうか、という根本的な労働のインセンティブの必要性はより一層高まってくるだろう。

 転職へのハードルも下がるだろう。当院でも3分の1程度のスタッフが転職組だが、彼らのモチベーションは概して高い。一方で会社としては優秀な人材が転職するのは断腸の思いであり、その分、待遇や環境を改善し人材確保に努めるはずだ。労働者と会社の間で好循環が生まれる。

 変化を起こすと必ずあつれきを伴うが、法改正も相まって時代は待ってくれない。あらがうのではなく、うまくその波に乗れればその先の未来は明るいはずだ。
(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)