<南風>書き物


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 小学生の頃から本を読むことは好きだったが、文章にする読書感想文は得意ではなかった。本の中の登場人物になりきり、その感情を疑似体験している感覚で空想の中の自分に浸ることが好きなだけで、第三者的な立場で感じることを文章として表現することが苦手だったからだ。

 作文で思い出すのが小学校の時、題名も内容も覚えていないが、忖度なく書いた作文の中に「お父さんは鬼です」というワードだけが記憶にある作文を担任に褒められたことがあった。参観日か文集だったかに発表する場が与えられたが、父に知られてしまうのが怖く、数日間は心身ともに萎縮し怒られるという不安な時を過ごした記憶がある。

 だが素直に感じ気付いたことを書いた作文が褒められうれしかったことや父に怒られないか不安だったという相対する感情が入り交じった作文だったが、今となっては父と笑って話すことができる良い思い出だ。

 そんな私が南風のコラムを執筆させてもらうことになった。最初から書けるエピソードやテーマもなく、論理的に書けるほどの知識も持ち合わせていないため、幼少のころの振り返りから始めてみた。振り返ってみると3、4回分のエピソードが浮かんだことや追い込まれることで必死になった小さな経験が後押しとなり、できるできないではなく、これは私に与えられたミッションだと腹をくくり、やる!と決断した。

 苦手意識の強い書き物だったがたくさんの方に見てもらうコラムで自身の素性を暴露した感もあるが、あと1回で最終回を迎えられることは読んでくださった方からの激励があったからだと思う。苦手なことも挑戦してみることで達成感を味わい自信につながる。これからも一つ一つ経験を積み重ね、人生の先輩たちに次いで人生を思いっきり謳歌(おうか)していきたい。
(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)