<南風>小さな販売員


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 「いらっしゃいませ」「買ってください」「見てください」と、祭り会場から威勢のいい声が響き、道行く人の足を止める。展示や販売コーナーは多くの人だかりで、各事業所の販売合戦にも力が入る。

 Ohanaの子供たちも、今回初めて販売に参加させていただいた。各事業所の手慣れた販売員たちは、元気よく笑顔でブース内を盛り上げ、障がいを個性として客を楽しませてくれる。その雰囲気に、次々と客が引き寄せられ品物が一つ一つ売れていく。買っていく人に皆で「ありがとうございましたー」を連呼。その一言がまた、買い手の「笑み」を引き出す。
 それを手本にOhanaの子供たちも意欲100パーセントで挑む。お客に、すかさず「100円」を連呼し、受け取るお金に達成感を味わう。でも、そんな光景も10分も経つと小さなトラブルが見え始め、客の「かわいいね」「えらいね」の言葉が、互いのライバル心をヒートアップさせる。今笑ったかと思えば、なぜかすね、怒っているかと思えば、突然笑ったり、甘えっこになってみたり。闘争心を隠しながら、互いに励まし、慰め、最後の「おいしいところ」を勝負する。テントの中は、まるで漫才師の舞台裏のようなにぎわいだ。そして期待外れのない「落ち」は、皆の気持ちを一つにしてくれる。
 祭りへの参加は、子供たちの小さな就業体験となり、いろいろなことを学ぶ機会になった。友達の存在や肌の感触、情緒のコントロール、言葉、空間認知、計算やお金、交通ルール…。苦手と得意を発見しながら少しずつストレスを受け入れ、階段を一歩一歩上がるように「できる」が増えていく。子供たちは日々の生活や、こうした体験の中で学んでいく。集団活動の良いところを取り入れながら、子供たちの「できる」を大切にしたいと願う。
(名幸啓子、障害児サポートハウスohana代表理事)