<南風>支え


社会
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 携帯電話がなく連絡も容易でない頃でも帰省すると必ず会いに来てくれた幼なじみがいて、やんばるや南部へドライブに連れだしてくれた。幼・小・中学校で遊んだ記憶はほとんどないがアルバムの中のヒストリーではいつも一緒だ。今でも時間が合えば、飲みながら他愛のない話や愚痴を聞いてもらいながら心の調整をとっている40年来の絶対に必要な存在の友がいる。

 社会人になり、お人形さんのようにかわいく笑顔がすてきな同期の子が私を大人の考えに近づかせてくれた一つの出来事があった。一緒に行った旅行ですさまじい家庭環境を打ち明けてくれたが、その内容から想像もつかないほど明るく前向きな話をしてくれたのだ。自分だけが悩み苦しいと思っていた未熟な私に壁を乗り越える強さを教えてくれた影響ある子だった。

 これまで出会った友人・知人の影響で視野が広くなり大人という自覚を持って結婚もしたつもりだった。だが初出産を終え、実家で過ごした初日に悪寒で鼻水が垂れた状態の硬直した私を何も言わずに抱きしめ温めてくれた母の子どもへの愛情。融通の利かないくそ真面目な私が精神的に参った時、ずっと寄り添ってくれた夫の優しさ。私が子どもたちを守っていると思っていたら体調不良の時、大丈夫と言った私の意思も聞かず病院に連れて行ってくれた子どもたちの無償の愛。反抗もけんかもした家族だが、いろんな側面から支えられたおかげで私という人間がここにいる。

 若い頃は粋がって一人で頑張っているなんて傲慢(ごうまん)な考えもなくはなかったが、このコラムを執筆することで出会った一人一人を思いだし、たくさんの人たちに支えられていることに感謝の思いでいっぱいになる。これからも一期一会の精神で今という瞬間に関わる人々に感謝し、大切に時を過ごしていこうと思う。

(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)