<南風>言葉の力


社会
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 「南風」執筆担当のお話を頂いたとき、うれしさとともに、14回もの連載を無事終えられるのか…という不安があった。そして今回が最終回、今感じているのは安堵(あんど)と一抹のさみしさである。

 予想以上に多くの方から「毎回楽しみにしてますよ」「今回のは面白かったです」「最近のはほのぼのしました」などお声がけいただき、また担当者さんとのやりとりも興味深く、そうした機会がなくなってしまうことは正直さみしい。

 それにしても、言葉というものの力を改めて感じた半年間だった。700余の少ない文字数で、伝えたいことがきちんと伝わるのか、一つのコラムとして最低限完成したものになっているか。毎回ちょっとした表現を書いては消しの連続だった。

 弁護士の仕事において、言葉は不可欠の最重要ツールである。日々、さまざまな種類の書面を作成し、また示談交渉など協議の場では口頭で主張を展開するわけだが、都度できる限り説得力があり、かつ相手に伝わる言葉をチョイスできるかの勝負だ。そのため「言葉の力」をつけることは非常に重要なのだが、「南風」は、仕事で使う言葉とは趣の異なる言葉とじっくり向き合える機会となり、自身への良い刺激になった。

 同時に力不足も実感し、改めて、世の中の良しとされる文章にもっと積極的に触れようと思っている。それにしても日本語は奥深いように思う。昔お世話になった米国人の英会話の先生が、日本語の素晴らしさを熱く語っていたが、母国語だとかえって認識しづらいその良さを今後はより意識していきたい。

 最後に、拙い文章かつ時にはまとまりのない内容であるにもかかわらず読んでくださった読者の皆様、琉球新報の担当者様、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

(林千賀子、弁護士)