<南風>いくつになっても主人公


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 明けましておめでとうございます。これから半年、私の思うままの執筆にどうぞお付き合いください。

 去る1月3日で47歳となった。3人の子の父として思うことは、家族でゆっくりできる貴重な年末年始に自分は生まれたのだと複雑な気持ちになる。自分を生み、ここまで育ててくれた両親に改めて感謝したい。

 もう記憶が曖昧ではあるが、私が中学生の頃に母が病気で入院したことがある。その時に病室で聴けるようにと、母が好きな井上陽水のアルバムをプレゼントした。それがきっかけで私も井上陽水の曲を聴くようになった。

 この頃、ふとした時に思い出して聴くのが「長い坂の絵のフレーム」である。インタビューで井上陽水はこの曲について歳を重ねていくうちに、未来よりも思い出話の方が増えてくる年代に差しかかった自分に気づき、それを曲にしたと語っていた。

 私は33歳で今の会社を起業した。当時はスタッフの多くが20代で、自分が引っ張らなければと今まで走ってきた。あれから14年、その頃のスタッフも30代後半となり、今では会社の中心として支えてくれている。

 あの頃は自分が会社を動かし子育ても行い、自分が社会の主人公のように思えた。だが気がつくと会社は30代後半のスタッフが活躍し、子どもたちもアイデンティティーが芽生え、1人の人として成長している。

 フィンランドでは2019年に34歳の現首相が着任している。日本でも学生起業家なども増え、若い世代が社会の主人公となっていくのを感じる。これからは若い世代がもっと活躍できる社会になってほしい。

 私のこれからの人生、若い人ほど輝かしい物語は多くはないかもしれない。それでも、自分の人生に関しては、何歳になっても自分が主人公として喜びも悲しみも抱えながら歩みたい。
(神谷牧人、アソシア代表)