<南風>沖縄転勤


社会
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 「沖縄? お断りします!」。24歳でジュンク堂に入社し、2年目で関西の支店店長となり、やがて新規店を任せられ次は東京だと息巻いていた、入社10年目のことだ。登ってきたはしごを外されるかのようで、沖縄転勤はまさに左遷と感じ抵抗したのだった。

 最初の沖縄は15年ほど前だったか、2月の冬の時期にもかかわらず、半袖半パンの格好で北部の高級ホテルに宿泊し、プールで優雅に泳いではワイン片手にステーキを食らうザ・観光客。沖縄はまさに楽園だと思った。今となっては思い出すと恥ずかしい気持ちになるばかりである。

 それからは訪れる機会もなく移住する際には沖縄通という知人に助言を乞うたが、店は全て昼から営業…那覇はどこも危険…ハブに注意…と今思えばめちゃくちゃな話である。大抵の観光客は空港から海やホテルに直行し、そこで過ごす非日常が基準となり沖縄の生活感に置き換えられてしまうのだろう。先日も国際通りで水着姿で堂々と買い物されている人がいた。依然と変わらない県外の沖縄イメージ恐るべしである。

 さて、抵抗した辞令だがジュンク堂創業者の直接告げられた言葉で観念する。「大型書店がなくて沖縄の人は本に飢えているんだよ。たくさんの本を届けないと。森本君、頑張ってくれない?」沖縄の人は本を読まないと聞くが、違う。読みたくても読めないのだ。心は決まった。沖縄で精いっぱい尽くそう。

 そう使命感に燃えてやってきた沖縄もはや12年。さまざまな人と出会い、多くを学び、県外目線が地元視点に変わりつつある。県外者である以上は完全に変わることができないが、それが悩ましく沖縄名字がほしかったとも思う。見た目は沖縄顔でルーツは沖縄に違いない? 厚かましいナイチャーである。そんな輩の珍道中お付き合いあれ。
(森本浩平、ジュンク堂那覇店店長)