<南風>沖縄初仕事


社会
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 「40人の採用枠に700人!?」最初は抵抗した沖縄行きの辞令。沖縄にたくさんの本を届けようとする創業者の思いを胸に覚悟を決めた。最初の仕事は2009年4月の開店に向けてのスタッフ面接だ。初の大型書店の出店になんと700人もの応募が。書類選考を経て2日間で約150人への面接を実施することとなる。

 面接に合わせ1月に初めて出店地を訪れるのだが、場所はダイエー那覇店の跡地、あのダイナハである。沖縄進出に反対運動もあったと聞くが、30年間にもわたりランドマークとして親しまれた。撤退後は近隣のほとんどの店舗が閉鎖しシャッター通りと化していた。

 シャツ1枚では肌寒い気候とどんよりした曇り空、泊港からの強い突風が通りに吹きつける。人がいないからか、まるで木枯らしのようだ。この島から歓迎されていないと思った。

 ここで大丈夫か。いや、これから自分たちも30年以上愛される店にするのだ。水族館に匹敵する本のテーマパークに。そのとき途方もない目標を立て息巻いていた自分には複雑な気持ちもありつつ、沖縄での仕事が開幕した。

 翌日、朝から日が沈むまで面接は続いたが、ホテルに戻ると面接に来ていた女性が受付にいて驚いた。後日、その女性は書店への熱い思いをつづった手紙をくれたのだが、若くして2人の子どもを持つシングルマザーだった。偶然の出会いも彼女の境遇も、なんとも沖縄らしい出来事だ。

 それからいったん大阪に戻り採用者へ直接電話する。大喜びしてくれたかと思えば、今忙しいから後日にしてくれと怒られ、ガチャンと切られたことも。あれ? 自分は採用とも伝えたのだが…。いろんな意味でみんな素直である。そんな沖縄での採用者と転勤者らで船出となるのだが、続きは次回に。
(森本浩平、ジュンク堂那覇店店長)