<南風>採用面接


社会
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 志望理由は? 長所と短所は? 尊敬する人は? 将来成し遂げたいことは? それらの問いにはいつでも答えられるようにと先生は言う。社会人の準備期間に投げられるそんな質問たちにバットを振りながら、心のどこかであきれる大学生の自分がいた。またこの質問か、またこんな質問で人を見ようとするのかといった具合に。今となっては、そのような質問に対し、どう自分の言葉で答えるかも一つの大切な採用基準なのだと理解できるが、弊社の採用面接は少し違った質問で進めたい。

 やはり食べ物の好みは最初に知っておこう。ステーキより焼肉派だとうれしい。音楽や映画が好きなら、お勧めトップ3は視聴しておこうと思う。洋服はどこで買うか、今欲しいものは何かも大事な情報だ。おいしいご飯は一緒に食べたいし相手の好みは理解したい。働く時は自分らしい身なりで来てもらいたい。

 部活動で頑張ったことよりも、部活の顧問や担任の先生はどんな人だったかを聞きたい。アルバイト経験から学んだことよりも、どんなお客を相手にしていたか、どんな店長で他のアルバイトにはどんな人が居たかを聞きたい。過去の環境や出会いを第三者に話す時こそ、そこに主の感情が垣間見えることが多い。最後には、お金も時間もあって何でもできるとしたら何をしたいかを聞くだろう。全力のわがままを聞いてその世界観に乗っかりたい。

 これから長い時間を共にする可能性がある人との会話に受けと攻めがあるのはよくない。お見合い相手に質問攻めをくらい、相手のプロフィルに書いてあること以外は聞けないまま、破談の連絡が来る。今の学生たちが味わっているのはこれと同じ苦味だ。「楽しくお互いを知る時間」。これが採用面接のあるべき印象だと私は思う。弊社の社員募集はまだ先の話だが。
(岩倉千花、empty共同代表)