<南風>沖縄初の具志堅さん


社会
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 「あなたがあの有名な…」。開業に向けて2009年2月、700人の応募の中から面接採用を終え、いよいよ移住することになる。住まいは那覇・泊に構えた。やがてその泊から開業前の店舗を初めて訪れる。本棚も照明も何もない1フロア500坪の大きな空間。そんな暗がりから工事用のヘルメットをかぶった人物が目の前に現れた。「具志堅です。よろしく」。え!? ぐ、具志堅! あの有名な名前に心が躍る。見た目は名チャンピオンとは全く似つかない、シュッとしたダンディな男性だ。肌寒い沖縄の気候と青い海もまだ見ていなかった自分には、テレビ以外では出会うことのない“具志堅”さんの登場に、初めて沖縄に来たと実感したのである。

 彼は東京でキャリアをこなし、広告代理店で活躍する業界人。出店するビル全体の宣伝を担っていた。既に自分らは方言を絡めたキャッチフレーズで売り出すことを伝えたが、県外企業が方言を使うことへの厳しい指摘と、他にも何から何まで全て否定される様。この人に書店の何が分かる? と一同警戒したがこれこそが沖縄、他県には当てはまらない独自文化だと強く訴えてくれていたのだ。

 その理解に数日要したが、忖度のない彼を信頼し委ね、創業以来唯一のテレビCMもできた。それから具志堅さんは10年にわたり沖縄文化、風習をたくさん教えてくれる恩人となる。

 一方で売り場には本棚が設置され、本の搬入を迎えた。その数100万冊。段ボールは1万箱以上にも及び、大型トラックで運ばれる。その光景を取材したいとテレビ局もやってきた。開業までに何度も新聞、テレビに取り上げられ、彼が手がけたCMと合わせて既に大きな話題となっていた。いよいよ開店を迎えるのだが、また次回に。ちなみに「本がマンドーン(たくさんある)」。当然ダメか。
(森本浩平、ジュンク堂那覇店店長)