<南風>天然だしはぬちぐすい


社会
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 昨年は沖縄の本土復帰50年の節目で、朝の連続テレビ小説の影響もあり、改めて琉球料理というコンテンツをPRする好機到来だった。さまざまな催しが開かれ、私もいくつかの事業に携わらせていただいた。

 私は埼玉県で生まれ育ち、地元の味や食文化に、あまり注力せずに暮らしてきたが、出張先の沖縄で出合った琉球料理の数々に心を奪われた日のことを改めて思い出していた。透き通ったうまみたっぷりのスープがおいしい沖縄そばや、泡盛で煮込まれた口の中でとろけるラフテー、ニンジンが主役になることを知ったニンジンシリシリー、初めて食べたパパイヤやナーベラーの食感など。数を挙げれば切りがないが、驚きと感動の連続だった。

 そして、沖縄は実はだし文化であることも知った。移住してからは、沖縄料理も頻繁に作るようになり、確かにだしを味付けに使用することも多いと実感した。また、琉球料理に関わる事業の中で有識者の方々と意見を交わす機会に恵まれた際、琉球料理の伝統的な味わいを出すには天然素材由来のだしが欠かせないと何度も言葉にされていたことが印象的で心に響いた。

 沖縄の伝統的な食文化は、「医食同源」の理念に基づき、食べることで滋養強壮(ぬちぐすい)になるといわれ、生活に根付いている。伝統的な味付けとしてカツオと豚のだしをよく利用し、そこに昆布やシイタケや魚介などを合わせ、料理によって複合的に使用する。塩分が抑えられるメリットもあり、中には、チムシンジ(豚レバー煎じ汁)など、薬の役割を果たすと考えられている汁物料理さえある。だしの素材のうまみや成分も体に吸収され、ぬちぐすいになる。

 天然素材にこだわり、ティーアンダーという言葉もあるように、心を込めてだしを取ることを大切にし、料理作りに生かしたい。
(下地友香、ちゅらグルメ編集長)