<南風>ラグビーブーム


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 W杯前の日本ラグビーは認知度が低く、世間を揺らした新国立競技場問題の煽(あお)りを受け「逆風」にもさらされていた。それが一転、今や絶好の「追い風」が吹いており、二十数年ぶりの「ラグビーブーム」だ。W杯終了後も、選手がさまざまなメディアに登場しているおかげで、ラグビーをより身近に感じ「試合を観(み)に行こうかな」と思っている人は多いだろう。一度観戦すると、そのスピード感や迫力だけでなく、フェアプレーやノーサイドの精神にも魅了されるはずだ。

 前にラグビーが人気絶頂だったのは1980年代で、国立や秩父宮ラグビー場が大観衆で埋まるのは珍しくなかった。スーパースター松尾雄治の引退試合となった85年の日本選手権には、6万人を超す大観衆が詰めかけた。私が初めて国立の芝を踏んだのもこの日で、前座試合として行われた高校東西対抗戦であった。見たこともない大観衆を前に、「超」張り切ったのを覚えている。テレビドラマ「スクールウォーズ」やユーミンの「ノーサイド」が流行(はや)ったのもその頃だ。
 沖縄ではつい先日まで、オリンピック出場を目指す女子7人制日本代表の合宿が行われていた。また来年2月には、世界最高峰のリーグ、スーパーラグビーに新規参戦する「サンウルブズ」(日本代表に準ずるレベル)の合宿も予定されている。二つの合宿を受け入れるのは、スポーツコンベンションに力を入れている読谷村。素晴らしい環境と施設、そしてホスピタリティーの魅力にあふれる「日本一人口の多い村」だ。
 沖縄の子供たちにとって「一流」に触れる機会は貴重で、日本代表を目指すきっかけにもなるだろう。「沖縄初のラグビーW杯出場」「沖縄初のラグビーオリンピアン」誕生で、「沖縄発のラグビーブーム」を期待したい。
(安村光滋、県ラグビーフットボール協会理事長)