「NPO法人 江戸しぐさ」の認定講師を務める篠原あかね氏は、関東沖縄経営者協会の賛助会員です。 「江戸しぐさ」とは、江戸商人のリーダーたちが築き上げた、人の上に立つ者の心得です。よき商人として、いかに生きるべきかという商人道で、人間関係を円滑にするための知恵でもあります。江戸時代は260年以上もの間、戦争のない平和な時代が続きました。その平和で安定した社会を支えたのが「江戸しぐさ」という人づきあい、共存の知恵です。江戸町人に由来する「粋」な行動哲学で、商売繁盛の秘伝とされ、あまり公にされたものではなく、江戸商人が組織した「江戸講」で口授されたようです。
「江戸しぐさ」の本質は単なる金もうけ、つまり商売繁盛のための手段というレベルから「商人哲学」と呼ぶべきものに達しています。その本質として、以下の5点が唱(とな)えられています。1つ「口約束を守る」(証文があろうかなかろうが、約束は果たす)、2つ「見てわかることは言わない」(見てわかったら行動で対応する)、3つ「結界覚え」(他人の専門領域を侵してはいけない・相手の領域は侵さない)、4つ「その人のしぐさを見て決めよ」(取引相手にするかどうかは実際に会ってしぐさを見て判断する)、5つ「尊異論」(違う意見の持ち主を大切にする)。
「江戸しぐさ」は、江戸に各地からやってきた人々が、商売繁盛を願って努力を重ねた「繁盛しぐさ」が始まりのようです。その後、成功した商人たちが店を構え、町の運営にも関わるようになると商人としての矜持を持ち、それなりの行動を意識するようになり、「商人しぐさ」、そして「江戸しぐさ」へと発展しました。現代にも通用する普遍的な教えではないでしょうか。関東沖縄経営者協会も大いに学んでいます。
(仲松健雄、東京沖縄県人会会長)