<南風>薬剤師のスキルアップ


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 新しい大きな病院に行くと会計の近くには薬剤部がありません。病院薬剤師は院外処方箋の発行により、通院患者に対する外来調剤から、より重篤で繊細な入院患者に対応するために活躍の場を病棟活動へ移し、最新薬物療法に携わっているのです。医学・薬学はより専門的で高度になり、注射薬や抗がん剤などの無菌調製も一般的に行われています。日々の業務がより複雑化している上に、当直やオンコール体制など多忙にもかかわらず、病院薬剤師は真面目で勉強熱心な方が多いように感じます。

 日本病院薬剤師会や団体・学会が所管する、がん、精神科、HIV感染症、妊婦・授乳婦、感染制御、栄養サポートなどの「専門薬剤師」や、漢方薬・生薬、小児薬物療法、緩和薬物療法、プライマリ・ケア、救急などの「認定薬剤師」など数多くの認定制度があります。要件が厳しいものもあり、取得者は少なめですが、免許更新制度がない薬剤師にとって学習の証しとなるこうした生涯学習認定制度は、勉強のモチベーションを持続させていく上で励みになります。
 町の薬局薬剤師も同じです。平日は業務終了後に勉強会があり、土日は研修会、また連休には全国で大きな学会が開催されています。認定がなくても勉強し自己研鑚(けんさん)している薬剤師が数多くいます。県外で開催される研修会や学会に参加すると、モチベーションの高い薬剤師仲間が全国各地に多くできます。その後もSNSを活用し切磋琢磨していくので、年に一度しか会えなくても同じ志を持った者同士、再会を喜び合える楽しみもあります。
 沖縄県薬剤師会の会営薬局では、仕事や育児などの事情で調剤経験にブランクがある方のための研修も行っています。せっかくの国家資格を寝かせておかず、県民・国民のために活用したいものです。
(吉田洋史、沖縄県薬剤師会理事)