<南風>カーブチーの謎


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 カーブチーの高付加価値利用をテーマにモノづくりに取り組んで、かれこれ10年以上経ちます。一〇〇%果汁飲料、ゼリー、コンフェチュール、アロマオイル、化粧品…いろいろ研究して参りました。開発秘話は別の機会に譲るとして、今回はカーブチーにまつわる謎の話を二つほど書いてみたいと思います。僕は柑橘(かんきつ)の専門家ではないので、笑って流してくださいね。

 まず一つ目が「ネーミングの謎」です。一般にカーブチーの名前はカー(皮)ブチー(厚い)でカーブチーと伝えられています。これを「方言由来説」とするなら、僕は「カボス由来説」で一石を投じます。カボスはユズの近縁種で「香母酢(かぼす)」とも表記され、香りを特徴とする柑橘に属します。かつてカボスは「カブチ」と称されることもあったようで、日本最古の薬物辞書「本草和名(ほんぞうわみょう)」にも「加布知(かぶち)」の名で登場しています。カブチとカーブチー。大きさも色合いも芳香も似た二つの柑橘。品種の違いはあれど歴史のどこかで接点があり、類似した呼び名が生まれたとも考えられます。
 二つ目は「ルーツの謎」です。カーブチーは琉球王朝時代から自生する古いミカンですが、来歴は不明です。生い立ちを知りたい反面、ナゾめいた物語にも魅(ひ)かれます。ついでながらカーブチーで気になることをもう一つ。以前、本土復帰前の古い柑橘調査資料を目にしたことがありました。その中に、当時山原にあった樹齢200年を超えるカーブチーの古木が紹介されていました。今なら樹齢250年以上になると思われますが、現存しているかどうかわかりません。
 1966年、屋久島で樹齢4000年の縄文杉が見つかりました。同じように山原の奥深く、カーブチーの古木がひっそり息づいているのではないかと、ふと夢見ることがあります。
(金城幸隆、オキネシア代表取締役社長)