<南風>ニービは鈍色


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 前回のクチャの語源も不明だったが、ニービも同じである。ニービは方言で、黄褐色~茶色をした細かい粒からなる砂層のことをいう。那覇市の小禄辺りや浦添市民会館、沖縄こどもの国付近にも分布している。この砂の地層は、クチャの地層に挟まれている。かつて、東シナ海が干上がり、陸地だったころ、大陸の大河長江(揚子江)の河口は、琉球列島あたりだった。その河が吐き出した堆積物がクチャである。大陸奥地の環境変化を受けて砂あり、泥ありの地層になったのである。沖縄島は、大陸のゴミからできた島であるともいえる。

 砂層には、まれにノジュールと呼ばれる球状の塊が含まれていることがある。これは、硬いのでニービヌフニという。フニは、方言で骨のこと、ウチナーンチュなら意味を容易に理解できよう。フニを利用したものでは、首里城正殿前の彫刻の竜柱がある。かつて村々の青年が力比べに利用した力石などは、このフニが多い。石の特徴は、小さなキラキラ光る鉱物を含むことである。大抵の人は、金だと騒ぎ、満足して喜んでいるので訂正はしないが、堆積岩にはよく見られる鉱物だ。
 ニービは、地表面で見る限り、茶褐色をしているが、それは地層の深い所まで風化し変質したためである。風化とは、石が腐れるということ。ニービヌフニを割ると、中心部は青色~青灰色をしている。これが風化前の新鮮な色である。色合いについて、語源的にニブである。ニビイロ・鈍色のことである。当時の博物学者は、しっかりとした観察眼をもっていたと思う。今でもニービは茶色だと思っている人がいるが、本来はニブイロである。学者がニブイロの砂だといったのがそのまま地層や岩の名前になったのだろうか。ぜひ教えていただきたいものだ。
(大城逸朗、おきなわ石の会会長)