<南風>「観たくなる」ポスター


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 先日、ようやく最新作のポスターとチラシが完成した。約2カ月ほどスタッフ内で悩んだ結果生まれた力作だ。印刷されてきた実物を見たとき、声を上げて喜んだ。映画が一つの作品であるように、ポスターやチラシも一つの作品であると思った。

 映画を見ていない人に、その映画の良さを伝えるのは大変難しい。「観(み)たらわかる」としか、監督としては言いようがない。
 時々、映画は感動的な内容なのにポスターはものすごくコメディータッチの作品がある。きっとそれは映画を売り出す側が、その方が多くの人に関心を持ってもらえると思ったからだろう。その映画の監督が、コメディータッチのポスターに納得しているかどうかは別として、やはり魅力的なデザインの方が、目にとまるのは明らかだ。
 今回、「人魚に会える日。」のポスターは、意味深な表情を浮かべた主役のユメちゃんと、そのバックに広がる青い海という非常にシンプルな構成だ。キャッチコピーは「私たちは無力なんですか?」。何度も話し合った上で決定したキャッチコピーだ。「無力」という言葉は、今の僕らを率直に表現した言葉だった。そして映画の登場人物もまた、それぞれが「無力」感を抱きながらも必死にもがいている。
 スタッフ誰もが皆、力のない大学生だ。そんな大学生が無い力を振り絞って、作り上げた1本の長編映画。この作品も、誰の心にも響かず、何かを動かすこともない、無力な作品かもしれない。しかしそんなことは、まず作品を見てもらわなければわからないのだ。
 今日から沖縄のスタッフと学生応援団が、県内のいろいろな場所へ心を込めて作製したポスターを貼っていく。「観たい」と思うきっかけのひとつに、ポスターの存在があってほしいと願いながら。
(仲村颯悟、映画監督)