<南風>安里カツ子さんのこと


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 職場で泣くと「女は泣けば許される」と言われてしまうので、極力耐えてきましたが、2年前、当社元社長で沖縄県副知事も務めた安里カツ子さん急逝の報を受けた日は涙が止まらず、仕事になりませんでした。

 出会いは1993(平成5)年、カツ子さんが当社の社長に就任した年です。「初めまして。新入社員です。このたびは社長ご就任、おめでとうございます」と緊張しながら挨拶(あいさつ)したことが昨日のことのようです。もともと福福しいお顔立ちのカツ子さんでしたが、さらに満面の笑みで「あなたも入社おめでとう。一緒にがんばりましょうね」と返してくれました。
 その後、12年ほど社長と若手社員という上下関係はありながらも、組織が小さかったということもあり、直接、助言を頂くことも度々。また女性同士の気安さもあって、私が仕事で煮詰まった時には食事に誘ってくださったり、話を聞いてくださったりと気遣ってもらいました。「相手の立場に立って物事は考えなさいね」「さりげない気配りを忘れずにね」とまさにご自身が気配り上手な素敵な女性(ひと)でした。
 県の女性中堅社員の能力開発を目的に県経営者協会の女性リーダー部会を96年に立ち上げ、部会長として11年務められました。会員に主体性を持たせるため定例会の企画や運営を事務局任せにしないスタイルを導入。まだまだ女性中間管理職が県内に少ない時代に、私も共に8年活動しましたが、良き異業種交流やチャレンジ精神、ビジネスマインドを培うことができたように思います。
 経歴は「バリバリのキャリアウーマン」ですが、私たちの「肝っ玉母さん」的存在であった安里カツ子さん。その功績に敬意を表しながら、私もカツ子さんに気遣ってもらったように次世代に繋(つな)いでいきたいと思います。
(名嘉村裕子、りゅうせきビジネスサービス代表取締役社長)