<南風>友情育むラグビー


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 「何でラグビーボールは楕円(だえん)形なの」「1人で遊べないようにだよ」。日本ラグビー史に燦然(さんぜん)と輝く天才、松尾雄治氏が幼少の頃に父と交わした会話だという。楕円形ゆえ、野球やサッカーのように壁を使って1人で遊ぶことはままならないが、「ラグビーは友達と仲良くなれるスポーツだよ」と言いたかったのではないだろうか。

 走る、当たる、倒す―など、あらゆる要素が絶え間なく繰り返されるラグビーは、「限界への挑戦」でもある。そんな時、信頼し、助け合えるチームメートの存在は極めて大きく、共に困難を乗り越える度に強い絆で結ばれるようになる。
 「友」という字には「お互いを助け合う」との意味もあるが、それが欠かせないラグビーは、友情を育むのにふさわしいといえよう。ラグビー精神を語る時、「One For All’ All For One」(1人はみんなのために、みんなは1人のために)という言葉がよく引用されるのも納得がいく。
 「ノーサイド精神」を象徴するものに「アフターマッチファンクション」がある。これは、試合後に両チームの選手やレフェリーが一緒になって行う簡単なパーティーで、ついさっきまで全身全霊を注いで戦っていた者同士が、お互いのプレーをたたえ合ったり、和やかに談笑したりするのだ。これはラグビーがずっと大切にしてきた特有の文化で、対戦した相手とも友情を育む素晴らしい機会となる。決して「たっくるせ~!」(やっつけろ)とはならない。
 中学までは、自分自身とも友達との付き合いもうまくいかないことが多かったが、ラグビーと出合い、歴史が育んできたラグビー文化にも触れたことで全てが好転していった。そんな私にとっても「ラグビーは友達と仲良くなれるスポーツ」であった。
(安村光滋、県ラグビーフットボール協会理事長)