<南風>子供の巣立ちの後


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 最近、障がいがある子供たちの保護者の思考が変わってきた。子供の卒業後や自身を考える人が増えている。5年前までは、子供たちの未来や成長を思い浮かべることさえできなかった。まして母親の「就労」など夢の夢。「理解されない就労」が、さらに保護者を追いつめてもいた。しかしこの数年で、福祉や子供を取り巻く環境が急速に変化してきた。今は堂々と言葉にすることができる。

 しかし、まだハードルは高い。障がいや年齢に合わせて子供を受け入れてくれる保育園は少なく、仕事も福祉サービスが利用できる範囲で探すほかない。母親の就労には、家族の協力や理解そして共同作業も重要になってくる。まして、母子家庭ならさらに大変な負担がかかる。
 Ohanaの保護者にも働く母親が少しずつ増えてきた。「いってらしゃい」と笑顔でハイタッチする親子の姿はほほ笑ましい。子供が室内に入るのを見届けたら、大急ぎで車に向かう母親たち。そして夕方はダッシュでお迎え。子供の笑顔で一日の達成感を感じる瞬間だ。働く母親なら、時々「なぜ、こんな大変な思いをしてまで仕事するの」と問われ、自身も悩む。子供に障がいがあれば、お迎え後のケアと家事を限られた時間でこなしていかなければならない。
 時間と人を上手に使い独自の方法を生み出していく。それは「子供」「命」「障がい」「家族」しか見えなかった世界を変えてくれるが、楽しむことを忘れてはいけない。子供はいつか巣立つ。自分の人生設計が必要なのはどの子の親にとっても同じこと。過程を楽しんでこそ誰かの知恵になる。次世代の保護者や障がいを抱える子供たちの世界を変えてくれる一つになれる。
 周りの人たちの理解と支援を繋(つな)ぎながら、焦らず、夢を積み上げてほしいと願う。
(名幸啓子、障害児サポートハウスohana代表理事)