<南風>少年院を日本一の学校に


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 僕は、大人のくせに夢ばかり見ている。カウンセリングが横道にそれ、夢の話になると、子どもと何時間でも話し込んでしまう。

 その、たくさんある夢の一つが「少年院を日本一の学校にすること」だ。おちこぼれと蔑(さげす)まれた少年院の子どもたちが、この国の柱となる人材に成長し、世界へ飛び出していく。想像しただけで鳥肌が立つ。
 それを現実にするためには、大きな志を持った法務教官を集めることから始めなければならない。少年院の最大の教育資源は、法務教官だからである。
 ところが、法務教官という職業は、社会的知名度が非常に低い。以前、沖縄県外のある専門学校で、公務員を志望する若者約70人を前に講演したが、そこでさえ、法務教官の採用試験を認知している者は、たった1人であった。
 同じ公務員でも、警察官になりたい、検察官になりたいと希望に燃える若者は数え切れないのに、この差異はどこから生まれるのか。原因はいくつか考えられるが、僕個人としてはメディアの影響が大きいと考えている。刑事もの、裁判ものの映画やテレビドラマなどは大量に出回っているが、少年院を舞台にした作品など聞いたことがない。2012年7月、海上保安庁を舞台にした大ヒット映画「海猿」の最終作が公開されるや、その2か月後に行われた海上保安学校学生採用試験の受験者数は、前年比約2・5倍に激増。これが、メディアの力だ。
 したがって、これからは少年院もメディアと組んで広報活動をしていかねばならないと考えている。シャイな僕が、休日を返上して講演依頼、執筆依頼を受けるのも、半分くらいは広報の目的があるからだ。
 現在は、少年院を舞台にした小説も執筆中である。まずは、僕が立ち上がって未来の法務教官を集める。そう決意している。
(武藤杜夫、法務省沖縄少年院法務教官)