<南風>感謝の気持ちでモノ作り


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 仕事を続けてきて30余年。来し方を振り返ると、あらためて感謝の思いに胸が熱くなります。

 僕の社会人デビューは24歳です。就職のチャンスを頂いたのが沖縄砂利採取事業協同組合で、関連会社設立に伴う採用でした。新会社の名前はエバーオンワード。「限りなき前進」という意味です。イノシシ年の僕にはグッとくる社名でした。これといった特技も資格もない僕でしたが、職場や組合関係者の温かい支援のおかげで少しずつ仕事を覚え、モノ作りのキャリアを積むことができたのです。
 ことに当時の上司で砂利組合の専務理事を兼務されていた小田光男社長には、「チャレンジ精神」と「ぶれない心」の大切さを教授して頂きました。公私にわたる、僕の恩師です。独立開業が「巣立ち」なら、羽ばたく勇気と力を深い愛情で育んでくれたのが小田社長でありました。
 僕は30代後半に脱サラし、会社経営という未経験の世界に飛び込みました。すぐに後悔しました。月々の給与が無いという当たり前のことが、想像以上にこたえたのです。資金繰りも苦しく、子供たちの学資保険を解約したこともありました。今でも思い出すと切なくなります。
 当時3人の子供はまだ幼く、小学生、幼稚園、乳飲み子と続いていました。仕事のしんどさに身悶(もだ)えする日も多々ありましたが、わが子の成長する姿に励まされ、妻の献身的な支えに救われて乗り越えることができました。僕にとって独立は試練でもありましたが、歓(よろこ)びの源泉でもありました。家族の絆を深め、たくさんの幸いな思いをもたらしてもくれたのです。
 年が明けるとオキネシアも創立20周年を迎えます。感謝の思いで節目に立ち、郷土に愛されるモノ作りを通して、これまで大勢の方々から頂いたご恩に報いて参りたいと思います。
(金城幸隆、オキネシア代表取締役社長)