<南風>ハワイからの星だより


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「天文学者っていったい何をしているの」「占星術師?」。職業を伝えた時によく受ける質問です。「毎晩夜空を眺めているなんてロマンチックな仕事ね」と言われたりも。ところが現実はコンピューターの前で丸一日を過ごす日がほとんど。天体観測も今の時代はコンピューターを使って望遠鏡を動かし、データを得ているので、下手すると観測中に自分の目で夜空を眺めることもなかったり…。

 けれどハワイ島マウナケア山頂で満天の星空を眺める時。机に向かい銀河のデータを見つめる時。宇宙という大きな砂場で遊ぶ子供のような、わくわくした気持ちになります。天文学者はその点ではいつまでたっても、子供のような心を持ち続けているのかもしれません。
 海外在住14年の私が現在住んでいるのはハワイ島。標高4200メートルのマウナケア山頂は世界10カ国の望遠鏡が立ち並ぶ、世界でも有数の天体観測地です。ただし富士山よりも遥(はる)かに高く、人体にとって過酷な環境なので、山頂に滞在できる時間も一日14時間以内と制限されています。山に登る時には、標高2800メートルにある山腹の中間施設で体を高度に慣らす必要もあります。
 普段の生活や仕事は、マウナケアに近い人口4万人余の町ヒロでしています。ヒロには日系・沖縄系移民が多く、沖縄県人会の活動も活発。サーターアンダギーはアンダギーとしてすっかり英語になっていますし、衣がアンダギーのホットドッグも売られています。夏になるとハーリー祭りで賑(にぎ)わいます。
 仕事をこなし、車で10分の珊瑚(サンゴ)礁が美しいビーチでウミガメや熱帯魚と泳ぎ、すばる(プレアデス星団)を眺めながら静かな夜を過ごす。普段はそんな日々を過ごしています。沖縄から約7千キロ離れたハワイから、これから半年間、星々やハワイでの生活をお伝えしていきます。アロハ!
(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)