<南風>うえのいだのリノベ


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 首里石嶺町の小さな畑「うえのいだ菜園」で無農薬野菜を育てながら美術講師、内装や造園の手伝いなど複数の仕事をしている。

 今から約5年前、祖父から畑を任され1年が過ぎた頃「他にも畑がある」と連れてこられた場所は、5メートルほどの木々が密集し目の前が数十センチ先も見えない薮(やぶ)。しかも接道していない囲い地で、不動産的には死んだ土地だ。少しかき分けて進むと、大きなアカギの木とその隙間から差し込む木漏れ日が優しい。そのまま森のような畑を作りたいと直感的に思った。今思うとこれがこの土地のリノベーションの始まりだった。
 一般的にリノベーションとは、古い建物を大きくつくり変えて新しい物にすることを思い浮かべるが、私が参加したリノベーションスクールでは、「re‐innovation」という語源が指すように、古いものや今あるものに再び(re)、新たな価値をつけること(innovation)で、その範囲は建築に限らず、暮らしや仕事全般に及ぶとのこと。その死んでいた土地は5年をかけて薮を刈り込み、木々を残しながら畑に作り変え、6坪ほどのデッキを作った。この場所では、畑と遊びをつなぐ「畑のアトリエ」や、ただただ畑でゆったり過ごす「畑の日」など、木々と畑を活(い)かしたワークショップやイベントで活用している。
 「うえのいだ(上之伊田)」とは、沖縄ではなじみ深い親戚同士が呼び合う屋号だ。畑での活動を通して、いろいろ問題があった家族のことも違った視点で新たに再創造=リノベーションしたいという個人的な想いから、畑の名前として屋号をつけている。
 これからの半年間、「リノベーション」「畑」「家族」「アート」について綴(つづ)っていきたい。読んでくれた方の何かのきっかけになればと思う。
(玉城真 うえのいだ主宰、珊瑚舎スコーレ美術講師)