<南風>独りじゃないよ


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 「独りじゃないよ。みんなで一緒にご飯を食べよう」。NPO法人ももやま子ども食堂は2015年5月5日に開所パーティーを開いた。
 放課後、だれもいない家に帰り、独りで過ごす子どもや、コンビニのおにぎりや菓子パンを買うきょうだいを見かける。土日など学校が休みの日は昼から公園でカップ麺を食べる子どもたち。こんな風に子どもだけで食事をする「孤食」だと思える子どもがいる。栄養だけでなく人とのコミュニケーションも不足する。

 私は、長年学童クラブを運営してきた。その中で、学童に行きたくても行けない子どもの孤立化を感じ、地域の子どもを地域で見守り、育てるために「子ども食堂」を設立した。毎週土曜日午後5時から7時まで開けている。一人100円で夕食が食べられるが、開店前の調理などを手伝い、食器洗いボランティアをすれば無料だ。一緒に料理をし、おしゃべりをしながら食べる。また食事の提供だけでなく、親が仕事で不在の子どもたちの夜の居場所づくりや、大学生による無料学習支援も始めている。
 「子ども食堂」は全国的に広がっているが、県内では初の試みだ。食を含め子どもを地域で支える同様な取り組みが各地域、自治体に広がってほしいと思う。
 研究者らの調査によると、県内では、自宅で子どもだけで食事をとる割合が全国平均の2倍という。私たちが目指すのは「食べる」という人間にとっての基本を満たしながら、信頼できる大人や若者と繋(つな)がることで子どもにとって安心や生きる力を育む居場所づくり。「子ども食堂」が必要な子どもがどれくらいいるのか、これから何人と繋がれるのか分からない。「子どもを独りぼっちにしない、地域の子どもは地域で見守り育てていく。子どもたちの笑顔があふれる食堂にしていきたい」と願っている。
(比嘉道子、NPO法人ももやま子ども食堂理事長)