<南風>畑のアトリエ


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 幼い頃、近所には同年代の子が5~6人いて、放課後は遊び相手に事欠かなかった。しかも家の周りは車の入り込めない路地で、陣取りや缶蹴りには最適、場を活(い)かして遊びも工夫した。親も目が届く距離感は、安心して子供を託せる場であり、子供のやることに対して今よりも大人が寛容だった。今は子供たちの遊ぶ環境が変化している。だからこそ自分で遊びを作ることが重要だと思う。

 私が主催する「畑のアトリエ」は、畑にあるものを使ったものづくりを基本にワークショップを開いている。もともと子供は、自発的に工夫しながら遊ぶ力を持っている。草花や木の実がおままごとの材料だったり、木登りはもちろん、枝を組み、ススキや蔦(つた)を絡ませた秘密基地など、畑は素材の宝庫だ。畑で遊ぶ力を育みたいと考えている。
 もう一つのねらいが、「土に触れる」ことだ。現代は除菌という機能がついた製品が溢(あふ)れている。しかし、日本人になじみ深い醤油(しょうゆ)、味噌(みそ)、お酒は菌の活動無しでは作れない。戦前は味噌の元になる糀(こうじ)を作る際、糀蔵と呼ばれる部屋の壁や天井に住む菌を下ろして糀を起こしていた。土の中も人の体も、菌やバクテリアといった生き物が星屑(くず)ほど住んでいて、影響しあってバランスをとっている。土に触れることはさまざまな生き物に触れることであり、その影響で免疫系が刺激され鍛えられる。その点に注目しても、子どもが土に触れる機会は重要なのではないかと思う。
 初めはうちの3人娘にそういう機会を与えたいだけだったが、友人家族や来訪される方が嬉(うれ)しそうに畑で過ごしている様子は私を優しい気持ちにさせ、やわらかく差し込む木漏れ日は母性的な温かさと匂いがする。これをたくさんの子供たちにも知ってもらいたいと2年前から「畑のアトリエ」を始めている。
(玉城真 うえのいだ主宰、珊瑚舎スコーレ美術講師)