<南風>草原のロックフェス


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 先日、アジア各都市の音楽プロデューサーを那覇に招いて「トランス・アジア・ミュージック・ミーティング」というカンファレンス(会議)を行った。

 登壇者の一人のジョルジは、モンゴルで長年音楽の仕事を続けている。昨年春、北京の音楽見本市で知り合って、6月の音楽フェスティバルに誘われた。
 沖縄で降雪の可能性がニュースになったこの日、氷点下34度の町からやってきた彼は、外でもTシャツ姿。「ウランバートルの寒い夏の夜ぐらいだ」と笑った。
 「プレイタイム・フェスティバル」という彼がCEOを務める会社が主催するイベントは、2007年に始まった。当初はウランバートル市内のライブハウスで行われていたが、現在は市内から車で約1時間の、草原に建つホテルの裏庭のような場所で行われている。
 広大な草原にはメインの大型ステージと、EDMステージ、キャンプサイトやフードコート、アートエリアがレイアウトされていた。すぐそばを美しい川が流れ、丘の上からは会場全体を一望できた。
 2日間のイベントに出演したのは約40組。多くの若い観客は、ヘヴィメタルやパンクロックのバンドに強く反応した。世界中で一般的に行われているロックフェスティバルのフォーマットをなぞるような形ではあるが、そのロケーションには、世界中どこにもないであろう、圧倒的なスケールと魅力を感じた。
 那覇でのカンファレンス、ジョルジはショーケースに出演する沖縄のアーティストの演奏をすべて聴くために会場を往復した。その中のいくつかのバンドには、強い興味を示していて、私も繰り返し質問をされた。もしかしたら、この夏、広大な草原で行われるフェスティバルで、沖縄のバンドが演奏する姿が見られるのかもしれない。
(野田隆司、桜坂劇場プロデューサー・ライター)