<南風>本音と僕


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 このコラムの僕のモットーは「本音で書く」ですが、普段なかなか本音を出せません。自分の悪い所を他人に見せたくない。自分の本音を出して相手が嫌な気持ちになったらどうしよう。さまざまな理由で本音を出せません。本音を出さなくても、円滑に生活ができれば良いとも思いますが、僕の経験でいうと、本音を出さない生活はうまくいかず、苦しいです。

 本音とは自然な欲求です。それを抑えるということは、不自然です。だから気持ち悪く感じるのです。本音同士でぶつかればいいのですが、人間は頭が良いもので、いろいろと先を考えてしまいます。自分が損をしたくないなどの理由で、本音を隠してしまうと思います。そして僕は、その類いの人間です。
 先日、舞台の本番直前に、普段漫才をやっているんですが、急に相方が「コントをしよう」と言ってきました。僕はおもわず「漫才が良いんじゃない。漫才が好きです」と言ってしまいました。すると、勘の鋭い相方は、「嘘(うそ)をつくな!本音で話せよ!」と一喝。そうです。僕は、嘘をついてました。急に「コントをしよう」と言われて、できるのか不安だったのです。それをごまかして、しかも良い人間と思われたかったのです。本音でない発言は見抜かれます。案の定僕も、相方に見抜かれ、だいぶ説教を受けました。
 でもなぜ僕は、本音を隠したのでしょう。それは、僕が感じたことが「悪い」と思ったからです。自分が悪いと思ったことは、出したくないものです。でも、本当に悪いことだったんでしょうか。それは分かりません。結局、自分で「悪い」と判断しただけです。
 お互いにもっと人間を信じて、本音でぶつかり合う方が自然だと思います。とにかく、自然に生きる方が楽です。今回、僕は楽に書けました。本音だったんで。
(内間政成、芸人 スリムクラブ)