<南風>2番目に好きなこと


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 「夢はありますか。将来どんな仕事に就きたいですか」。もし学生さんや若い人で将来はどの道に進もうか迷っているなら、参考程度に体験談を少しだけ。

 現在私は写真撮影など出版関連の仕事にも携わっているが、中学生の頃は音楽好きで音楽プロデューサーに憧れた。当時大好きだったのが、テクノ音楽のYMO。リーダーの細野晴臣の著書『レコード・プロデューサーはスーパーマンをめざす』を読んで影響されたのだが、ふと、「音楽で食べていくには、どれくらいヒット曲をリリースし続けなければならないのだろうか」と冷静に考えた。
 夢をあきらめるつもりはなかったが、もし音楽を職業にしてしまったら売れることが最優先されるため、ビジネスとして何かを妥協することもあるかもしれない。それゆえに一番大好きな音楽が大嫌いになってしまったら、元も子もないと真面目に悩んだ。なぜなら当時大人気だったテレビの音楽番組の歌謡曲と、自分が好む西洋音楽などとはギャップがあった、ということもある。
 悩んだ末、「2番目に好きなこと」を職業にしようとひらめいた。部屋の壁いっぱいにレコードジャケットを飾り、音楽雑誌を読みあさっていた少年は出版関係を目指すことに。アルバムジャケット制作や出版物などで音楽を支える側の仕事に就けるなら、ずっと音楽と寄り添っていけるだろうと直感した。
 自分の中から湧き起こる心の声を信じて進んだ結果、大手出版社に就職することができた。結論として、良い距離を保ちながら、今も音楽を一番好きであり続けている。
 もうひとつ言いたいことは、直感を大事にすること。心の声に耳を傾け、自分自身を信じることで、“自信”も漲(みなぎ)ってくる。まずは己の可能性を信じてあげよう。
(桑村ヒロシ、写真家)