<南風>中医学に出合う


社会
<南風>中医学に出合う
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 在宅で患者さまの栄養管理をするのは、病院で勤務している時と比べると難しかった。病院ではカルテなどで血液データの情報を得たり、病棟に行けば患者さまに会えたりと栄養管理はスムーズだった。しかし在宅では、採血の情報も簡単に見ることは難しく、悩む日が増えてきた。当時は採血の結果で人の身体の様子を確認していたからだ。

 ある日、東京栄養士会から「中医薬膳を学びませんか?」と案内が来た。「薬膳って何だろう」と半信半疑で東京に通うことを決めたのが始まりだった。薬膳の基本ベースは中医学であり、中医学(中国医学)の知識がなければ薬膳は語れない。

 ぜんそくには「あひる汁」、母乳の出が悪ければ「てびちとパパイヤ汁」、胃が痛ければ「ニガナの汁」、のぼせや産後の女性には「イカ墨汁」…。このような考え方は中医学であり、その思想は、食物は薬「クスイムン」が基本の考えとなっている。

 内臓の不調は、表に表れるという考えがあり、採血の結果は最も重要ではあるが、ある程度の身体の様子は顔色や声の大きさなど、診て聞いて判断することが大切ということを東京で学んだ。

 しかし、なぜ、沖縄のお年寄りが話すことと、東京で学ぶ中医学が全く同じなのか、不思議に思い、調べると「琉球の食医学書・御膳本草」という書物と出合った。その内容は、中医学の教科書と同じ内容だったので、すごく驚いた。本土でしか学べなかった中医学だったが、日本は沖縄から発信するべきであり、沖縄県民にその存在を伝える必要があると強く使命感を感じたのだ。

 その後、中医薬膳ではなく琉球薬膳と名乗り、沖縄の宝物である「御膳本草」の考え方を普及させ、守っていきたいとの強い思いがある。

(宮國由紀江、国際中医師)