<南風>ちんすこうの宇宙


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 「物事はね、心で見なくてはよく見えない」。フランスの作家、サン・テグジュペリの代表作「星の王子さま」の一文です。私も大好きなこの小説、読まれた方も多いのではないでしょうか。

 「大切なものは、目に見えない」。作中、キツネが王子に伝える人生の秘密です。そしてこの宇宙でも、大切なものは目で見えないことが、近年の研究によりわかってきました。星や銀河といった、私たちが見ることができる普通の物質は、宇宙の全物質のわずか5%に過ぎないのです。残りの95%は暗黒物質や暗黒エネルギーと呼ばれる、正体不明の未知の物質です。
 では目で見えないものを天文学者はどうやって発見し、測っているのでしょうか。「心の目」で見たいところですが、重力場の歪(ひず)みなどから間接的に観測し、重さや分布を測定しているのです。
 一昨年沖縄へ帰郷した際、県内各地で講演会を開きました。その時、琉球銘菓ちんすこうを使って、宇宙を表現してみました。レシピはココア味60個(350グラム)、プレーン味3個(18グラム)。ダークな色のココア味ちんすこうが表しているのは、暗黒エネルギーと暗黒物質。プレーン味は宇宙の普通の物質です。
 講演会後には会場の皆さんにちんすこうを差し上げ、“宇宙”を食べて実感し、学んでもらいました。それは「新垣ちんすこう」の老舗、新垣菓子店のかわいい星形のちんすこうです。そちらへ嫁いだ中・高校時代のクラスメートが、私の講演のためになんと無料で提供してくれたのです。
 ちんすこうと友情が奏でる、おいしい宇宙。食いしん坊の私にぴったりです。ただしハワイには、ちんすこうはありませんので、クッキーやM&Mチョコを使っています。
 皆さんも身近な食べ物で宇宙を表現し、召し上がってみてはいかがでしょうか。
(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)